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東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)67号 判決

一、原告請求原因一および二に記載された、特許庁における手続経過および審決の内容に関する事実は当事者間に争いがない。

二、先ず、本願考案の要旨とするところについてみるに、その成立に争いのない甲第一号証の一および同第八号証(昭和三七年三月二九日付手続補正書および訂正説明書。なお、この補正書および訂正説明書が審判の審理終結通知の到達前に原告から特許庁に提出されたことは当事者間に争いがない。)、特に同第八号証の訂正説明書中登録請求の範囲の記載によれば、本願考案の要旨は原告主張のとおり、別紙(一)の図面に示すように、「電気露出計連動写真機において、光枠6を設けた光枠板5に光枠6とは別個の指針窓7を設け、この指針窓7に近接して電気露出計の指針10の先端部を置いたフアインダーの構造」にあるものと認めるのが相当である。

審決が、本願考案の要旨を「電気露出計連動写真機において、トリミングフアインダー・マスク(5)にトリミング枠(6)とは別個の指針窓(7)を設け、該指針窓(7)に近接して電気露出計の指針(10)の先端部を置いたフアインダー構造」にあるものと認定していることは当事者間に争いがなく、これは成立に争いのない甲第四号証および同第一五号証によれば、昭和三五年九月五日付訂正説明書(甲第四号証)の記載特にその登録請求の範囲の記載に基づいて右のように認定したものであることが明らかである。しかし、右は、甲第八号証の訂正説明書により前記のように認定したものと、多少表現を異にするだけで、その趣旨において実質上差異はないものということができる。

三、そして、その成立に争いのない乙第一号証の記載によれば、審決が引用例として挙げた特許第一四四、七七八号明細書には、別紙(二)の図面に示すような、審決において認定されたとおりのフアインダーの構造が記載されていることが認められる。

四、そこで、本願考案が引用例のものと、構成および作用効果において顕著な差異ありとすべきかどうかについて検討する。

前記認定のところから明らかなとおり、引用例の特許明細書およびその第二図に記載されているフアインダーにおいては、光枠板の最下方の光枠を電気露出計の指針窓として利用しており(引例明細書にいう「映像面枠」および「光細隙として形成された映像境界線」は、それぞれ本願の説明書記載の「光枠板」および「光枠」に相当する。)、一方、本願考案においては光枠と別個に指針窓を設けることにし、その指針窓の形状・大きさおよび位置について何の限定もない(このことはいずれも当事者間に争いがないところでもある。)ので、この事実を前提として原告指摘の相違点について検討する。第一に、原告は、光枠を露出計の指針を見るために利用する場合と、指針窓を光枠とは別個に設ける場合とでは見やすさの点において相違がある旨主張するが、露出計の指針を見やすくするためには、光枠の当該部分の幅を若干広くすれば、その目的を達することもでき、このことは、設計に当つて当然に考えられるところを出ないものであつて、光枠をせまい幅のまま用いなければならないという要請は見当らないのであるから、光枠とは別個に指針窓を設ける意味は、指針を見やすくするという目的のためには、それほど重要なものとはいえない。

たしかに、光枠の本来の役割は原告もいうとおり写真像の撮影範囲を定める目的で設けられるものであるから、その光枠の幅は細いもので足りるものではあるが、他の目的にも用いようとする場合に、その目的に応じ、必要な設計上の変更を加えることは当然であつて、この設計上の変更によつて、光枠の本来の役割が果されなくなるということはできない。

原告は、光枠の幅を広くすると、不都合を生ずる旨主張するが、光枠のすべてに亙つてその幅を広くしなければならないものではないし、必要な限度において特定の個所に変更を加えれば足りるものであり、また、光枠の部分は被写体が見えなくなつてしまうという点については、これを認めるに足りる資料はなく、また露出計の指針が見やすくなる程度に光枠の幅を広くするにすぎないから、たいして広くするわけでもないので、この点に関する原告の主張は理由がない。

第二に、原告は、露出計の指針の存する個所についての相違点を挙げるが、引用例の図面においては、光枠の下辺部分が指針を見うる位置として記載されているが、その成立に争いのない乙第一号証のその他の記載を綜合すれば、たまたま図面には右のような位置に指針が見えるように記載されているとはいえ、右は単に実施例を示すに止まり、右の位置に限定されるべき理由は見当らないから、必要に応じ、その位置を変更する余地もないわけではないから、この点に関する原告の主張は理由がない。

第三に、原告は、本願考案においては、指針窓を光枠板とは別個に設けているため、指針を見うる位置をすぐに見つけることができる旨主張するが、たしかに別個に設けられておれば、容易に指針を確認できるであろうが、そのことも、光枠の特定部分に指針を確認しうるものと対比しても、顕著な作用効果上の差異があるとするには足りないというべきである。すなわち、前記のように、光枠の幅を若干広くすれば指針が見やすくなり、したがつてその位置を見つけることも容易になるわけであるし、指針の見える位置を光枠に一致させるかどうかということだけによつて、それほど顕著な効果上の差異があるとも考えられない。指針の見える位置を光枠に一致させるかどうかというようなことは、むしろ必要に応じて適宜にきめられる程度のことと認めるのが相当であつて、この点に格別の考案力を要するものとは認められない。

五、結局、本願考案は引用例から容易に推考できるものとして拒絶するのを相当とした本件審決には何らの違法もないので、その取消を求める原告の請求は理由なきに帰する。

〔編註〕 本件に関する別紙は左のとおりである。

別紙 (一) 本願考案の図面

<省略>

別紙 (二) 引用例の図面

<省略>

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